「知」の集積と活用の場 産学官連携協議会

研究開発プラットフォーム活動事例集2019

事例 4 土壌改良による農産品の品質向上と
収量増加に関する研究開発プラットフォーム

プラットフォームの目的

国内の農産品の品質向上と収量増加に資する土壌改良技術の研究開発を行い、以下を推進する。

プラットフォームの取組

■プラットフォームを立ち上げたきっかけ

プロデューサーが農実業と農科学の両方で活動を進める中、様々な案件が手元に集積されるようになった一方で、折角の知見に発展・広がりがないことを悩ましく感じていた。『「知」の活用と集積の場』を知り、これらの整理・統合・発展・発信を共にできる共同体のようなものを作りたいとの想いから、関係者賛同を得て設立に至った。

■組織構成

これまでの成果

■進行中のプロジェクト:サラブレッド堆肥

黒田教授(茨城大学農学部)へ美浦の馬牧場協議会から馬糞処理に関する相談が持ち込まれたことが契機となり、プラットフォームメンバーで解決策を検討協議。

サラブレッドはドーピング検査に備えて抗生物質を服用しないことからその馬糞を良質な有機物と捉え、ブランド堆肥化し、地域のブランド農産品創出にも繋げる構想が持ち上がったが、大量に出る馬糞を短期間で堆肥化・活用するサイクルを事業として組み立てられるかがポイントとなった。

プラットフォームのネットワーク、茨城大学の知見・信頼性、リーフの技術・事業リスクテイクを総動員して解決に当たり、平成30年度は短期間での堆肥化成功、地域の農家(農事組合法人いばらき県南阿見産直センター)での試用を開始。平成31年度は堆肥の商品化、ホームセンター等での販売開始、堆肥ハウスの増設、成果・成分分析等も行なっている。馬牧場にとっては馬糞処理問題解決、農家にとっては土壌改良及び特性ある農産品創出という課題解決、地域の水質汚染に繋がる環境課題解決につながる。

インタビュー

このプラットフォームは、土づくりの研究開発をベースに、無農薬・酵素農法を活用した土壌改良によって、日本国内の農産品の品質向上と収量増加を行う。その中心を担うのが、つくば牡丹園の園長・関浩一氏だ。花栽培の立場から土壌改良に関わるのは、「地力の低下」という花にも農作物にも共通する大きな問題があった。

地力を上げる土づくりで農作物を健康に

プラットフォームの目的は日本国内の農産品の品質向上と収量増加だが、その問題は「地力の低下」にあると関氏は語る。「今の日本の農業は、多くのものが農薬を使わないと収穫できません。その原因は、地力の低下です。しかし、土づくりをきちんとやれば農薬も減らせるし、無農薬でも収量を増やせます。土が健康であれば作物も健康になり、それを食べる人も健康になるのです」。

もともと牡丹に惚れて花職人となった関氏。ところが、その愛する牡丹に平成3年ころから病気が出始め、化学療法を行っても治らない。試行錯誤した関氏は土づくりや微生物の権威と呼ばれる先輩たちに師事し、その知見を仰いだ。日本の高温多湿の風土は、農薬や殺菌剤を使わないと牡丹栽培は不可能といわれていたが、その後、独自に土づくりの実践・観察を重ねるにつれ病気が発生しなくなり、平成8~9年頃には無農薬で栽培可能となった。以来21年間、完全無農薬で牡丹や芍薬の栽培を続けてきた。土づくりによって不可能を可能にしたのである。

「大事なのは、有機物と微生物。化学肥料はあまりにも簡単なので、土づくりを怠るようになって地力が低下したのです。連作障害や薬剤耐性も問題になっていますが、それも有機物や微生物のバランスが崩れていることが原因です。本来、土の中にはさまざまな微生物が共存していますが、農薬によって良い微生物も悪い微生物も死んで、耐性がついたものだけが残り、さらに強い農薬を使ういたちごっこが起きています。温故知新で、土づくりをきちんとすれば、そのバランスも健康的になり、健康な作物が収穫できる。バランスが大事なのは人間の腸内細菌も同じですよね」。

経験を学術で裏付けた、実践的なノウハウを農家に伝授

関氏の堆肥作り等の技術による土壌改良ノウハウは、短期間かつ比較的低コストで地力を回復させる効果がある。関氏は、それをほかの農業にも役立てたいと考えて、芍薬畑でジャガイモを栽培し高い収穫量をあげてみせた。さらに落花生、ナス、トマト、ピーマン、カボチャ、スイカと作物を広げ、そのどれも良い結果となり、それを目の当たりにした近隣農家も関氏に相談を持ち込んでくるようになった。

また、関氏は茨城大学の小松崎将一研究室に所属し、東京農工大学大学院連合農学研究科博士課程3年に在学中。生涯学習と言いながら関氏が目指しているのは、学術と実業(農業)の融合だ。自身が長年の経験や実践から体験してきた知見を、科学でも理にかなっていると裏付ける。伝統的な農家は、学術から入ることに抵抗感があるが、関氏のように実践し、さらに同じ農家であることが、大きな説得力になっているという。プラットフォームには農事組合法人として80~90農家が参加しており、関氏は、月1回の勉強会で土づくりの基本を伝えながら、個々の農家からの相談にも応じているという。また、地元農家だけでなく、NPO法人や行政や民間企業も参加し、事例の集積によってより実践的なノウハウ蓄積を進めている。その一方で、今後の展開も見据え、懸念される堆肥作りをはじめとした活動に関わる知的財産の取り扱いについては、専門家を交え検討中である。

今後はブランド開発や地域活性で日本農業に貢献

すでに茨城大学に持ち込まれた相談から、製品化されたもののひとつに「サラブレッド堆肥」がある。馬糞の処理に困った牧場の相談から、関氏の技術を使って、良質な堆肥にし、製品化したのが「サラブレッドみほ」だ。ホームセンターや牡丹園で販売も行っており、今後さらにバージョンアップも考えているという。家畜糞の処理は各地で同じような課題があるが、この方法なら短期間かつ低コストで堆肥化できるので、巨大な堆肥センターなどの施設が必要なくなる可能性もある。

良質な堆肥から良質な作物を育ててブランド化も推進され、単収があがれば農家の生活も楽になり、海外輸出など大きなビジネスに成長させることも可能だ。基本の土づくりを極め、個々の農家の相談を解決しながら、今後は、そうしたブランド開発やビジネス展開で他プラットフォームとも連携し、日本の食料自給率にも貢献できるような取り組みを目指している。