「知」の集積と活用の場 産学官連携協議会

研究開発プラットフォーム活動事例集2019

事例 1 科学的根拠に基づく高付加価値日本食・食産業
研究開発プラットフォーム

プラットフォームの目的

目的・特徴

科学的根拠を新製品・新加工技術の開発、各種戦略のキーに位置づけ、日本食産業の産学連携研究開発の醸成の場となることを目的とする。専門家集団(プロデューサーチーム)がその機能を担う。

中長期ビジョン
  • 新たな生物素材やメタボローム解析技術等を活用した科学的根拠に基づく製品の開発
  • 国内外の様々なエリアの市場ニーズを見据えた地域性豊かな加工食品の改良開発
目標とする成果
  • 農林水産品の高度加工、科学的根拠に基づく高付加価値商品の切れ目ない輸出展開
  • 新たな日本食市場の創出と食産業の成長産業化を達成

プラットフォームの取組

■組織構成

■プラットフォームの運営方針と構成員の特徴

プラットフォームの構成員拡充、コンソーシアムの立上げにあたっては、以下の事項を重視している。

これまでの成果

平成28年度「知」の集積と活用の場による研究開発モデル事業

■「第1コンソーシアム 高付加価値日本食の開発とそのグローバル展開コンソーシアム」(平成28年~令和2年)
【研究概要】
参画各社が有する発酵食品(みりん・日本酒)・水産製品(練製品・甲殻類加工品)の独自技術による事業実績・知財と企業の国際市場情報を基に、大学・独法の先端食品分析化学による網羅的解析・官能評価を統合させる。

インタビュー

産学連携の取組には「ナレッジや技術が不足して研究開発が進展しない」「知財の取扱いについて合意が取れない」といった悩みが付きまといがちだ。これらの課題をいかに解消し、事業化へこぎつけるのか。技術移転機関(TLO)のスタッフがプロデュースするプラットフォームの活動に、そのヒントを見出すことができる。

加工食品・技術の強みを科学的根拠で裏付け

「科学的根拠に基づく高付加価値日本食・食産業」研究開発プラットフォーム(以下、「プラットフォーム」)のミッションは、各食品メーカーの製品や加工技術の優位性を科学的根拠で立証し、事業を促進することにある。「こうした産学連携活動の環境を整えるのがプラットフォームの役割です」と語るのは、プラットフォームでプロデューサーチーム長を務める水田貴信氏だ。

2016年、前身である「東北食品研究開発プラットフォーム」の活動を国内全域に拡大するべく、現プラットフォームを設立した。研究開発の幅も広がり、現在は既存製品の売りを見出すことにとどまらず、見出した売りをキーにして高付加価値化した新商材の開発も目指すようになっている。

研究を滞らせない予算・知財・メンバー戦略

プラットフォーム活動の狙いは、萌芽的な産学連携の取組を後押しし、事業化へ向けて加速させることだ。「我々がバックアップしたいのは、国による開発費の全額助成を単に期待するのではなく、最初から自己投資をしで“本気の産学連携”に取り組んでいる企業です」と水田氏は言う。そうした取組のうち、プラットフォームの理念に合致するものに声を掛けて、プロジェクトごと加入してもらう。さらに、必要に応じて複数の担い手を組み合わせ、プラットフォーム内にコンソーシアムを形成。各企業が資金的メリットを得ながら、研究開発を多面的に展開させられるようにする。

事業化を強力に推し進める戦略も具体的に実践している。たとえば、予算面では、資金獲得が遅れて研究開発が減速しないよう、コンソーシアムが立ち上がったタイミングで申請できる公募事業の利用を幅広く検討する。公費による事業は申請時期が年度当初に偏るが、民間財団が募集する事業も視野に入れることで選択肢が広がる。

また、TLOのスタッフでもある水田氏が特に工夫しているのが知財マネジメントだ。まず、知財ポリシーは代表研究機関のものをベースとし、個別の案件が生じた都度微調整する方法を採用することで、合意形成を円滑化する。加えて、新たに創出された知財については、貢献度のもっとも高い担い手を客観的に見極め、明確に帰属を決めることで、無責任な知財管理・使用を防ぐ。

さらに、ナレッジや技術の不足が原因で研究開発や事業化が難航しそうなときは、コンソーシアムに新しいメンバーを招いて障壁を解消する。新メンバー候補はプロデューサーから提案することもあれば、研究者や企業からリクエストが上がるケースもある。

「研究開発をとにかく形にするために、事業化へ向けてつまずかないよう手助けをするのがプロデューサーの責務です。予め決め過ぎたマネジメントがハードルとなり、新メンバーの参加を妨げ、解決できないのでは本末転倒です」と水田氏は強調した。

少数精鋭チームによるフレキシブルな運営

プラットフォームの運営は、各領域の専門家で構成される少数精鋭のプロデューサーチームが担う。チーム員は、産学の合意形成や知財マネジメントに長けた水田氏のほか、研究開発活動のプロフェッショナルや、資金調達の知見を持つリサーチ・アドミニストレ一夕ーなど全23名だ。コンソーシアムのメンバーから新たな専門家をプロデューサーチームヘ招くこともある。各コンソーシアムからは随時相談を受け付けており、該当領域に詳しいチーム員の裁量で速やかに問題の解決策を提示する。「チームとしてコンソーシアムヘのソリューションを考えられる運営体制を心掛けています」と水田氏は話した。

また、各研究開発活動の進捗は、こうした個別のやり取りの中で把握するのが基本だ。全メンバーが一堂に会する定期的な進捗報告会議は極力行わない。「会議を開く=進捗する・進捗管理が万全、は錯覚で、会議に投じるコストが進捗を妨げる事実も見るべきです」と水田氏は主張する。

カテゴリーを超えた産学連携支援へと進化

積極的な産学連携活動を引き続き推進する過程で、今後はより多くのコンソーシアム形成が望まれる。一方で、現在プラットフォームが位置づけられている健康長寿というカテゴリーに息苦しさ、限界を感じる場面もある。「プラットフォームは健康長寿という響きにミスマッチのない研究開発プロジェクトしか支援できないとか、ミスマッチのない研究開発のみ企画、または招聘すべきといった雰囲気を感じます。せっかくの企画の種を健康長寿らしくないことを理由に他のプラットフォームヘ紹介したこともありましたが、せっかく我々を評価し加入希望を表明いただいたプロジェクトをカテゴリーのせいで受け入れないのは悩ましいし申し訳なくも思います」と水田氏は話す。

そうした課題意識から、将来的にプラットフォームの在り方を再検討する必要性も感じている。最後に水田氏は「ジャンルにとらわれすぎずに産学連携を推し進めるのが、私自身の得意なやり方です。TLO業務に携わる私にしかできないプラットフォームやコンソーシアムの在り方に、これからもこだわっていきます」と語った。